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札幌高等裁判所 昭和58年(ネ)60号 判決

昭和五八年(ネ)第六〇号事件控訴人、昭和五七年(ネ)第三四九号、

同第三五〇号事件被控訴人(第一審原告―以下第一審原告という。)

甲山太郎

甲山花子

甲山月子

右法定代理人者父

甲山太郎

同母

甲山花子

右第一審原告ら訴訟代理人

北潟谷仁

田中宏

昭和五七年(ネ)第三五〇号事件控訴人、昭和五八年(ネ)第六〇号事件被控訴人

(第一審被告―以下第一審被告という。)

北島洋司

右訴訟代理人

黒木俊郎

昭和五七年(ネ)第三四九号事件控訴人、昭和五八年(ネ)第六〇号事件被控訴人

(第一審被告―以下第一審被告という。)

社会福祉法人北海道社会事業協会

右代表者理事

有末四郎

右訴訟代理人

森越博史

森越清彦

藤原栄二

高橋剛

主文

一  第一審原告甲山太郎、同甲山花子及び第一審被告らの控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。

1  第一審被告らは、第一審原告甲山月子に対し各自金四六四四万六六三四円及び内金四四四四万六六三四円に対する昭和五四年三月三一日から完済まで年五分の割合による金員(ただし、内金二五五二円を差引いた金員)を支払え。

2  第一審被告らは、各自第一審原告甲山太郎、同甲山花子に対し金五〇〇万円及び内金四五〇万円に対する昭和四九年一〇月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  第一審原告らのその余の請求を棄却する。

二  第一審原告甲山花子の本件控訴を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審を通じて二分し、その一を第一審原告らの、その余を第一被告らの、各連帯負担とする。

四  この判決は、第一審原告らの勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一当裁判所も第一審被告らは本件各結果について共同して第一審原告らに対し不法行為による損害賠償責任を負うべきであると判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決二八枚目表二行目冒頭から同六七枚目裏末行の末尾までに説示するところと同一であるから、これをここに引用する。ただし、原判決添付の別表六ないし一〇、同一三ないし一五を、別紙添付の別表六ないし一〇、同一三ないし一五のとおり、それぞれ改める(訂正箇所に下線または傍線を付した)。

1  原判決二八枚目表二行目の「本件過誤」の次に「(その意議については二を参照)」を加える。

2  同裏九行目に「昭和五一年一一月一二日」とあるのを「昭和五一年一〇月三〇日」と改める。

3  同三〇枚目表六行目から七行目にかけて、及び同四〇枚目裏一〇行目に「昭和四七年一月一九日、昭和四九年一月一一日」とあるのを「昭和四七年一月一四日、昭和四九年一月九日」とそれぞれ改める。

4  同三〇枚目裏六行目に「RH式血液型については」とあるのを「RH式血液型について」と、同七行目及び同八行目に「妊娠」とあるのを、いずれも「妊婦」とそれぞれ改める。

5  同三二枚目表七行目に「蛋白溶中」とあるのを「蛋白溶液中」と、同一二行目に「凝集能」とあるのを「凝集能力」と、同裏八行目に「甲第五八ないし第六四号証、」とあるのを「甲第五八号証ないし第六一号証の各1、同第六二号証ないし第六四号証、」と、それぞれ改める。

6  同三四枚目表一行目に「誤まり」とあるのを「誤り」と改め、同裏一〇行目の「被告センターから、」の次に「昭和四六年一一月一二日から昭和四七年一月三一日までの梅毒検査の依頼者名、被検査者名、判定結果を記載したものとして提出されている控(乙ロ第六号証の1、2)のうち、昭和四七年一月一七日の欄には「北シマ、甲山花子」の記載があり、また、」を加え、同三五枚目表四行目に「にも、」とあるのを「には、」と改め、同行の「また、」から同八行目の「いずれについても」までを削除する。

7  同三五枚目裏二行目の「記載のとおりとなり、」の次に「(ただし、昭和四八年一二月一二日の豊田愛子の④、⑤の検査は、いずれもその前日になされたものである。)」を加え、同三行目に「二六名」とあるのを「二五名」と改める。

8  同三六枚目裏一行目の「医師が」から同一一行目の「考えてきたが、」までを削る。

9  同三七枚目裏六行目から七行目にかけて「受命裁判官」とあるのを「証拠保全裁判官」と改める。

10  同四二枚目表五行目に「同年五月二〇日」とあるのを「同年五月八日」と、同六行目に「妊娠予定日」とあるのを「出産予定日」とそれぞれ改める。

11  同四三枚目表一三行目に「原告甲山花子本人尋問の結果、」とあるのを「原審及び当審における第一審原告甲山花子本人尋問の結果、」と、同裏七行目に「被告センター」とあるのを「第一審被告協会」とそれぞれ改める。

12  同四六枚目裏末行の「イクテロメーター値」の次に「(以下「イ値」ともいう。)」を加える。

13  同四八枚目表一一行目に「「母児免疫」が成立したという。」とあるのを「「母児免疫が成立した」という。」と改める。

14  同五〇枚目表一一行目に「抗Dヒト免疫グロブロリン」とあるのを「抗Dヒト免疫グロブリン」と改める。

15  同四四枚目表一三行目に「一九四〇グラム」とあるのを「一四四〇グラム」と、同裏六行目に「アブガルスコアー」とあるのを「アブガースコア」と、それぞれ改める。

16  同五三枚目裏一一行目に「数十例」とあるのを「約一〇例」と、同五四枚目表二行目に「重ねてなされているなど」とあるのを「重ねてなされているほか「六月二八日」とされるべきものが「八月二八日」と誤記されているなど」と、それぞれ改める。

17  同五四枚目表九行目から一〇行目にかけて「昭和五一年六月二一日」とあるのを「昭和五一年六月二六日」と、同一二行目に「板倉美穂子」とあるのを「板倉(旧姓佐藤)美穂子」と、それぞれ改める。

18  同五四枚目裏七行目の「三本分」の次に「(ビリルビン検査用二本分、白血球検査用一本分)」を加え、同五五枚目裏一一行目に「コートロミンZ」とあるのを「コートロシンZ」と改める。

19  同五八枚目表六行目の「前後の期間」の次に「(昭和四九年七月六日から同年同月一三日まで)」を加え、同表九行目に「新生児管理基準」とあるのを「新生児管理規準」と改める。

20  同五九枚目表六行目から七行目にかけて「長岡照子」とあるのを「長岡昭子」と、同七行目に「平林恵子」とあるのを「平藤恵子」と、それぞれ改め、同八行目の「藤田久子」を削除し、同一二行目に「裏に」とあるのを「出産以外の理由で」と改める。

21  同五九枚目裏八行目から九行目にかけて「昭和四九年七月二四日」とあるのを「昭和四九年七月二九日」と改め、同一一行目の「申し送り事項欄の前に「七月一一日の欄の」を加える。

22  同六一枚目裏八行目に「陰性」とあるのを「マイナス」と、同九行目に「陽性」とあるのを「プラス」とそれぞれ改める。

23  同六二枚目裏一一行目の次に、次のとおり加える。

「なお、第一審原告らは、第三子の死産は、第一審被告らの過失により惹起されたものであるから、同被告らは信義則上第三子が死産であつた旨を主張することは許されない旨主張するが、たとえ右のような事情があるからといつて、同被告らの右主張が許されないものではないから、全証拠によるもほかに特段の事情の認められない本件においては、第一審原告らの右主張は採用することができない。」

24  同六三枚目表一一行目冒頭から同行の「被告北島は、」までを「既に二及び三で認定したとおり第一審被告北島は、昭和四三年四月一日の開業以来昭和五一年一一月まで同人が患者から採取した血液について、取下前第一審被告センターに各血液型の判定を依頼していたものであつて、第一番原告花子が第一子及び第二子である同月子を懐胎した際にも同花子の血液型の判定を依頼したものであるところ、同」と改め、同裏五行目の「いうこともでき、」の次に「この母子健康手帳が、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため母子保健法(昭和四〇年法律第一四一号)第一六条に基づいて交付され、母親の妊娠中から出生児の小学校入学に至るまで引き続いて利用される性質のものであることから、」を、同裏七行目の「怠らしめ、」の次に「第一子出生の際に抗D抗体の産生を未然に防止できなかつたため、」をそれぞれ加え、同裏末行の「その検査結果を」から同六四枚目表二行目の「相当であつて、」までを「第一審被告北島は、本来自ら或いはその指導監督のもとになすべき血液型の判定を前記のとおりセンターに依頼してなしたものであり、センターはいわば同被告の補助者ともいうべき地位にあるものであるから、その判定結果を信頼したとしても、その判定結果から生じた危険につきその責任を免れることではできないものと解すべきであつて、」と、また、同六五枚目表四行目及び同裏一〇行目から一一行目にかけて「誤まつた」とあるのを、いずれも「誤つた」と、同裏六行目に「判定結果の誤記載」とあるのを「RH式血液型の誤つた判定結果の記載」と、それぞれ改める。

25  同六六枚目表七行目に「早期発見が可能とする文献上の指摘」とあるのを「早期発見が可能である旨を指摘する文献が第一審原告花子の通院当時既に数多く公刊されていたこと」と、同表八行目から一〇行目にかけて「(前掲甲第八六ないし第九九号証による)前医の判定結果についての危険を引受けたといわざるをえず、」とあるのを「(前掲甲第八六号証ないし第九一号証、同第九三号証、同第九六、第九七号証、同第九九号証による)第一審被告協会は診療に当るべき担当医師が本来自ら或いはその指導監督のもとになすべき血液型の判定をなさず、前医の判定結果をそのまま利用して診療をなしたものであるから、右判定結果から生じた危険につきその責任を免れることはできないものと解すべきであつて、」と、同裏六行目の「根拠とはなしえず、」から同七行目末尾までを「根拠とはなしえない。」と、同裏九行目及び一一行目に「原告」とあるのをいずれも「第一審原告ら」と、同六七枚目表一行目に「①ないし⑱」とあるのを「1ないし19」と、それぞれ改め、同表九行目の「1・2」の次に「、同第一五四号証の3・4」を、同裏六行目の「既に認定したところによれば、」の次に「第一審原告月子は、出生の翌日から黄疸が出ており、核黄疸の第二期症状と考えられる発熱等がみられていたのであるから、」を、それぞれ加える。

二  第一審原告らの損害についての判断は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決六八枚目一行目冒頭から同七二枚目表三行目末尾までに説示するところと同一であるから、これをここに引用する。

1  原判決六八枚目表一三行目の「昭和五五年」から同六九枚目表三行目末尾までを「昭和五八年産業計、企業規模計女子労働者の平均年間給与額金二一一万〇二〇〇円(当裁判所に顕著である。)を基準とし、ライプニッツ方式により民法所定の年五分の割合による中間利息を控除して算出すると、第一審原告月子に対する本件医療事故により脳性麻痺症状が確定したことが明らかな昭和四九年一〇月一日現在における逸失利益額は金一五九三万〇九五四円である。

(141,200円×12+415,800円)×(19,2390−11,6895)=15,930,954円

また、同原告は、前記賃金センサスによると、女子の賃金は男子のそれに比し著しく低額であるから、この格差を是正するため賃金センサスによる給与額に家事労働分を加算すべきである旨主張する。しかしながら、被害者が現に有職の主婦であつてさらに家事労働に従事している場合は格別、本件のように幼児である場合には、将来どのような生活を営むかは全く予想することができないから、右主張はにわかにこれを採用することができない。」と改める。

2  同六九枚目表一三行目の「最新の簡易生命表」から同裏一〇行目末尾までを次のとおり改める。

「昭和五八年の簡易生命表における九才の女子の平均余命が七一才であることは当裁判所に顕著であるところ、成立に争いのない甲第一六五号の1ないし7及び弁論の全趣旨によると、第一審原告月子が八〇才に達するまでに要する介護費用のうち本件医療事故と相当因果関係にある損害は一か月当り金一〇万円とするのが相当であつて、これをライプニッツ方式により民法所定の年五分の割合による中間利息を控除して算出すると、前記の昭和四九年一〇月一日現在における額は金二三五一万五六八〇円である。

100,000円×12×19,5964=23,515,680円」

3  同七〇枚目裏末行に「全身胎児水腫症」とあるのを「胎児全身水腫症」と改める。

4  同七一枚目表七行目冒頭から同八行目末尾までを、「難いこと、並びに当審における第一審原告花子本人尋問の結果によつて認められる第一審原告月子の現在における心身の状況、第一審原告太郎、同花子が、第一審原告月子の父母として将来にわたり重症心身障害者たる同原告を抱えて被るであろう精神的苦痛その他弁論にあらわれたすべての事情を斟酌すれば、その慰藉料は、第一審原告太郎、同花子につき、それぞれ金四五〇万円が相当である。」と改める。

5  同裏二行目に「各金二〇万円」とあるのを「各金五〇万円」と改める。

三そうすると、第一審原告らの第一審被告らに対する本訴請求は、第一審原告月子が第一審被告北島、同協会各自に対し各金四六四四万六六三四円及び内金四四四四万六六三四円に対する同原告が核黄疸に罹患し、脳性麻痺症状が確定したことが明らかな昭和四九年一〇月一日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、第一審原告太郎、同花子はそれぞれ右被告ら各自に対し各金五〇〇万円及び内金四五〇万円に対する前記昭和四九年一〇月一日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限定で認容し、その余は失当として棄却すべきところ、第一審原告月子が昭和五八年八月三一日センターから本件の損害にあてるものとして金一〇〇〇万円の支払を受けたことは、同原告と第一審被告北島との間においては争いがなく、同原告と第一審被告協会との間においては同原告が自認するところであつて、全証拠によるもその充当につき特段の合意があつたことは認められないから、これを昭和五四年三月三〇日までの遅延損害金及び同月三一日のそれに金二五五二円を充当すると、結局第一審原告月子の請求は、第一審被告北島、同協会に対し各自各金四六四四万六六三四円及び内金四四四四万六六三四円に対する昭和五四年三月三一日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金(ただし内金二五五二円は支払ずみ)の支払を求める限定において理由がある。

以上のとおりであるから、第一審原告太郎、同花子及び第一審被告両名の控訴に基づきこれと異なる原判決を右のとおり変更し、第一審原告月子の控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用し、主文のとおり判決する。

(瀧田薫 吉本俊雄 和田丈夫)

別表一〜別表一五〈省略〉

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